年取った犬が死ぬときを迎えました。その犬を飼っている家族の母親は、「どうして犬は人間より早く死ぬの?」と悲しみます。そのとき、6歳の息子が「僕は、どうしてか知ってるよ」と話し始めます。
「お母さん、イチローの様子がおかしいよ!」 「たいへん! 獣医さんを呼ばなくてはね」 イチローはゴールデン・レトリバーで、10歳になりました。6歳の明はイチローが大好きで、いつも一緒に遊んでいました。でも、最近、イチローは年取ってきて、体が弱っていました。
獣医が家に来て、イチローを診察しました。獣医は首を振って、明のお父さんとお母さんに「イチローの命はもう長くない」と言いました。 「ご家族3人で、イチローが死ぬときに一緒にいてあげてください」と獣医は言って、帰って行きました。
「でも、明はイチローの死を受け止めることができるかしら?」 お母さんがお父さんに尋ねました。お母さんの目からは涙がこぼれそうです。
お父さんは、明をそばに呼んで、言いました。 「明、悲しいことだけど、イチローは天国に行ってしまうよ。みんなで見送ってあげようね」 明は、黙って、イチローの首を優しく抱いていました。 明は普段と変わらない様子で、イチローが死んでしまうことを理解していないように見えました。
その日の夜、イチローは家族に見守られて、静かに息を引き取りました。
「どうして、犬はこんなに早く死んでしまうのかしら」 お母さんが、犬の一生が人間の一生よりもずっと短いことを悲しみました。 すると、それまでずっと黙っていた明が、静かな声で言いました。
「ぼくは、どうしてか知ってるよ」 お母さんとお父さんは驚いて、明の方を見ました。 明は、言いました。 「人間は、いつも、みんなを大好きでいたり、みんなに優しくしたり、毎日楽しく生活したりできるように努力しているんだよね?」 6歳の男の子は続けました。 「犬は、もうそういうことができているから、人間ほど長く生きなくてもいいんだよ」